マーケットガーデン作戦(HJ) 橋はやはり遠すぎる! |
日付 | 1993年10日10日 |
著者 | 稲葉 |
マーケットガーデン作戦 |
1944年9月17日午前10時を少し回ったころ、南イングランド全土にわたる飛行場から兵員輸送の為の最大の軍用飛行隊が離陸した。暗号名(マ一ケット)の空挺作戦には、戦闘機、爆撃機、輸送機など併せて約5000機、グライダー約2500機以上が参加した。 これに呼応する地上作戦(ガーデン)のため、英第2軍の戦車縦列部隊がオランダ=ベルギー国境沿いに集緒、オランダ=ベルギー国境沿いに集結、オランダ中枢部に猛進をしていた。 バーナード・L・モントゴメリー英陸軍元帥起案による、連合軍最高司令官ドワイト・D・アイゼンハワー米陸軍大将の大胆にして意表をついた〈マーケット・ガーデン〉作戦の開始であった…。 |
はじめに |
マーケットガーデン作戦は、映画『遠すぎた橋』やハヤカワ文庫の『遥かなる橋』などで有名になった、第2次世界大戦における連合軍最大の空挺作戦です。 この作戦を再現する作戦級シミュレーションゲームがホビージャパン社(以下HJ社)のマーケットガーデン作戦(以下OMG)です。 OMGは、HJ社オリジナルゲーム第3作目で、国産ゲーム初期作品の範晴に含まれていますが、その作戦の抜群の知名度とシンプルなシステムの為か、いまだに根強い人気を保っています。 さて、このOMGには興味深いエピソードがありますが、タクテクス誌をよく注意して読まないと気が付かないかもしれません。 ことの起こりはシミュレーター誌7号(1983年11月25日発行)バトルレポートです。 そこでは、『ヒストリカル・シナリオでは、ドイツ軍はへまさえしなければ、英第30軍団はナイメーヘンの灯さえ見れない』と断言しています。 デザイナーは、タクテクス誌14号(1984年2月25日発行)に、デザイナー自身が作戦研究を書いた『橋は遠すぎない!』が掲載し反論します。 その編集後記には 『…は今号最大の記事になりました。このゲームにはドイツ軍がやけに強いというウワサがあるらしいのですが、デザイナー氏に言わせれば、そんな筈はない、巷の迷プレイが悪いのだ、そのことでこの企画が組まれたのです。 この記事については特にご感想をお待ちしています』 と…。 そして、同誌17号と19号に“感想”が載りました。この2通に共通するのが、 『…OMGは持っていませんが…』(つまりプレイした事は無い) と書いてあることです。 その後、暗にゲームバランスの悪さを認める一文が載ります。 同誌22号巻頭言に、 『バランスの悪いものはダメなシミュレーションゲームだ、と言うかわりに、バランスの悪いシミュレーションゲームは嫌いだ、と言うべきです‥』 ‥と。 しかし、ゲーマーの中には、なぜOMGのゲームバランスが悪いのかを正しく理解していない人が多いようです。 実際に筆者自身も各地のコンベンションで・連合軍をプレイして負けたことがありません。 独軍の作戦が、タクテクス誌14号のデザイナー直筆のリプレイのように大変に下手なのです。 そこでOMGがいかに連合軍が不利で独軍が有利かを、わかりやすく証明する作戦研究を行いました。 |
攻撃しない独軍必勝法 |
実は、OMGにテクニックを必要とする独軍必勝法は存在しないのです。 意外に思われるかもしれませんが、特別な作戦や高等戦術に頼らなくても平凡な作成を行えば勝ってしまうのです。 ただ、それでは説明が進めにくいので、便宜上に以下のように独軍の作戦を分類してみます。 1.英第1空挺師団を攻撃する 2.米第82空挺師団を攻撃する 3.両師団とも包囲し攻撃しない。 どれでも勝てるのですが、比較的に知られていない3の作戦を紹介します。 この作戦のキーポイントは、独軍主力部隊(SS装甲)の迅速な地図外移動とフェリーの活用です。 |
第2ターン |
【図A】を参照してください。 第2ターン独軍移動フェイズ終了時の戦況を示しています。 ネーデルライン川のフェリーに独軍(第9SS装甲師団・第10SS装甲師団)が殺到して乗船を待っています。 移動力が追加3MP必要なのですが、部隊が機械化されていることと、オランダの遣路網が整備されていることから想像以上に速く戦線に展開することができるのです。 一方、アルンヘムの英第1空挺師団の空挺堡には最小必要な戦力で包囲しています。 また、他の小戦力部隊は地図外移動させ、フェーヘルとフラーフェの間に散開させ英第30軍団の進撃速度を鈍らせます。 |
第4ターン |
【図B】は第4ターン独軍移動フエイズ終了時の戦況です。 すでに独軍はネーデルライン川のアルンヘム道路橋渡河点と、ワール川・ナイメーヘン道路橋渡河点を確保して封鎖しています。 連合軍が勝つにはワール川を渡河しなければならず、それができるのがナイメーヘン道路橋1箇所のみです。 英第1空挺師団と米第82空挺師団は1度も攻撃してもらえず、ただ独軍の移動を川越しに眺めているしかありません。 独軍は続々と地図外移動で地図左側(北側)から、また2つフェリー渡河点によって部隊を集結しつつあります。 |
第10ターン |
【図C】は第10ターン独軍移動終了時の戦況です。 英第30軍団は比較的順調に進撃できたようで、ナイメーヘンに英近衛機甲師団主力が到着しています。(普通は12ターン前後) しかし、東岸の独軍陣地を見てください。 ネーデルライン川とワール川の間を要塞化しています。 両川の間のレント周辺の独軍砲兵陣地は強力で、連合軍のいかなる行動も瞬時に粉砕してしまうでしょう。 そして、独軍は英第1空挺師団の空挺堡を勝利条件から無視してもいのです。 ここに欧州最大の自給自足の捕虜収容所の完成です。 ゲーム終了時に連合軍がワール河以北に補給下の英第30軍団部隊が10個未満しかおらぬ場合、独軍戦略勝利となります。 この後は、最終25夕一ンまで両軍の弾幕射撃のむなしい応酬が続くのです。 |
第13ターン |
ナイメーヘン道路橋東岸に対する.連合軍の攻撃を正確に分析してみます。 作戦開始:第13夕一ン 目標=ナイメーヘン道路橋東岸 目的:同地点の奪取及び確保 連合軍(攻撃側73戦力) 独軍(防御側36戦力) 攻撃力73と防御力36では2:1となり、これに航空支援ポイントを加えて3:1にしても、防御部隊になんらかの損害を与える確率は11.7%。 それも戦力段階を損失させることで防御側は後退しなくてもよい為、連合軍はその目的(戦闘後前進)を達成させることは決してできないのです。 |
後書き |
大雑把な内容となってしまいましたが、ヒストリカルシナリオでは、連合軍が(勝利条件上)不利である事実が少しでも伝われぱと思います。 連合軍が降下オプション(降下地点及び部隊の自由選択)を採用した場合には、天候にもよりますが、ヒストリカルシナリオに比べてゲームバランスが改善されます。 |
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